よくある質問

FAQ

緑内障についての解説

Q. 緑内障という名前の由来は?

古代ギリシャの「ヒポクラテス全集」に「瞳孔が海の色のようになり、やがて失明状態になる」と記述しているのが緑内障についての最古の記載といわれています。日本や中国では、眼の病気で虹彩より奥の病気を「内障(そこひ)」といい、病気を五色で表現し「青内障(あおそこひ)」と呼ばれる病気がありました。ヨーロッパではGlaucom(Glaucoma)という病名がこれにあたり、江戸時代後期の蘭学の翻訳の過程で「緑内障」となったと推定されています。古代ギリシャ語のGlaukos(青緑色、灰色がかった緑の意味)がGlaucoma(緑内障)の語源であるといわれ、ヨーロッパでも日本でも、この病気の表現に「あお」を使用しているのは興味深いことです。なお、中国語では緑内障を「青光眼」といいます。

Q. 緑内障とはどのような病気なのですか?

緑内障は、視野が次第に狭くなっていき、進行すれば失明に至ることもある視神経(外界からの視覚情報を脳に伝える神経)の病気です。

眼の中には、涙とは違う水「房水」が循環し、角膜や水晶体に必要な栄養分を運んでいます。「房水」は、毛様体でつくられて隅角から排出され、眼の中では一定の量に保たれていることで眼の硬さが決まります。この硬さのことを、かかる圧力で表して「眼圧」といいます。日本人の眼圧の正常値は、10-20mmHg、平均で14-15mmHgです。緑内障は、この眼圧がその眼が機能するのにちょうどいい眼圧(健常眼圧)を超える事などで、視神経が損傷されて起こります。眼圧が20mmHgを超えても緑内障にならない場合もあります(高眼圧症)が、眼圧が正常範囲にあっても視神経の方に何らかの弱さがあると緑内障になることもあります。

初期の段階では自覚症状がほとんどなく、視力(矯正視力)は良いことも多いため、気づかないまま放置してしまう方がたくさんいらっしゃいます。 中期・後期段階になっても、やはり症状が少ないため、視野がかなり狭くなっても、その霞んだ感じを老眼や白内障だろうと思い込み早期発見のさまたげとなっていることもあります。緑内障になっても、すべての方が視覚障害に至るわけではありませんが、緑内障は常に日本の中途失明原因の上位にありますし、視野に見えないところが増えると日常生活のさまざまな場面に影響します。

自覚症状はなくても定期的に眼科検診を受けていただくことが、緑内障を早く発見するために重要な対処法といえます。

Q. 緑内障は治る病気ですか?

一度損傷を受けた視神経は、治療をしても元には戻りません。現在行われているおもな治療は、眼圧を下げることで視野狭窄の進行を遅らせるための治療で、残念ながら根本的に視野を回復させる治療法はまだみつかっていません。

そのため緑内障では、初期の段階での早期発見、そして早期の治療開始が求められます。早期に緑内障を発見するためには、視力検査だけではなく、定期的な眼底や眼圧の検査、視野検査などの眼科検診を受けることが最善の方法です。
また、発見された時に、中期以降に進行してしまっていた場合も、それ以降に治療を継続することで、少しでも進行を防ぐことが大事ですので、定期的な眼科への通院と管理が一生必要になります。

Q. 緑内障患者はどれくらいいるのでしょうか?

緑内障患者は、日本での調査によると、40歳以上の20人に1人の割合であると考えられています。そして年齢とともになりやすさが増えるので、70歳以上では10人に1人が緑内障といわれています。同調査によると、その約90%の患者さんが自覚症状がないまま治療を受けていない潜在的な患者さん(未発見患者)であったと報告されており、決してまれな病気ではありません。また人口の高齢化で急激に緑内障患者数が増えている可能性がありますし、緑内障発症の危険因子である強度近視が増えていることからも、病期の初期から後期まで含めて、全国でおよそ500万人の患者がいると推定されています。

Q. 緑内障にはどのような種類のものがあるのですか?

緑内障は、原因と隅角の狭さにより分類されています。
緑内障になる原因のわからないものを、「原発緑内障」、眼や体の病気やその他の原因があるものを「続発緑内障」といいます。先天的な緑内障は、子供のころから発症の可能性もあります。

「原発緑内障」について
1 原発開放隅角緑内障
原因がわからない緑内障の中で、隅角が広く開いている型です。隅角は開いていますが、その先の排水路(シュレム管など)で房水がうまく流れなくなるために、眼圧が高くなる型です。何年もかかってゆっくりと進行していく慢性の緑内障ですが、眼圧が高いと進行が早くなります。

※正常眼圧緑内障
原発開放隅角緑内障の中で、眼圧は正常範囲にあるのに、視神経が損傷を受けてしまうタイプの緑内障です。この型は自覚症状が無い事が多いので、気づかずに放置されている場合が多く、特に注意が必要です。この正常眼圧緑内障は、日本では最も多いタイプであるといわれています。慢性に経過します。

2 原発閉塞隅角緑内障
隅角が狭くなって房水の流れが悪くなることで眼圧が上がる型です。
慢性に経過する型と急性緑内障発作と呼ばれる状態があります。
軽い頭痛や目の痛み、虹視症(電灯の周りに虹のような輪が見える症状)などの症状がある人もいますので、そうした症状が出たら早めに眼科の診察を受けてください。

※急性閉塞隅角緑内障
目の激しい痛みや頭痛、吐き気や嘔吐などの症状とともに突然眼圧が上がる急性の緑内障です。 これは虹彩などにより隅角がふさがれてしまうために、眼圧が急激に高くなってしまう状態です。激しい眼痛などが起きても、頭痛や嘔吐の症状もあることから、眼の病気だと気づかずに内科や脳の病気と思い込み、治療が遅れてしまうことがあります。眼の治療をしないで放置すれば失明につながりますので直ちに眼科を受診することが大切です。

「続発緑内障など」
外傷や他の病気、薬剤などによって眼圧が高くなっておこる型の緑内障があります。治療には眼圧を下げるだけではなく、緑内障を起こしている原因への対処が必要になります。

緑内障は40歳以上に多い疾患ですが、先天性の原因により赤ちゃんや若年者に起こることもあります。

Q. 緑内障に自覚症状はありますか?

緑内障はかなり進行した状態にならないと視力は落ちないことが多く、ゆっくり進む視野狭窄は自覚症状では見つけにくいことがわかっています。特に、日本人に非常に多い、眼圧が高くならない正常眼圧緑内障などの慢性の緑内障では、視野の欠損は自覚できないことが多いといわれています。

視野が欠けていく様子をあらわしたのが下記の図です。

Q. 緑内障は遺伝するのですか?

緑内障の中には、遺伝が関与していることがわかっている場合もあり遺伝子治療に向けた取り組みもあります。また、家族歴に緑内障がある方は、注意が必要で、特に眼科検診が重要です。しかし、家族歴などに何もない人にも緑内障は起こります。まだまだ、緑内障の本態の解明がされていないので、血縁者に緑内障が無くても、安心はできません。

検査と治療

Q. 視野の欠損を自分で調べる方法はありますか?

視野欠損がかなり進行しているのに自覚症状がない、という場合の視野異常の発見の手助けとなる方法をご紹介します。ただし、緑内障の初期や中期の段階の場合は、この方法では発見できない場合も多いですし、進行している場合もすべての方がこの方法で視野の欠損が発見できるわけではありませんので、緑内障の心配のある方は、必ず眼科医の診察を受けるようにしてください。

日本視野画像学会のWEB

クロックチャート
http://jps.umin.jp/general/clockchart/selfcheck/howtouse02.html

クワトロチェッカー
http://jps.umin.jp/general/quattrochecker/glaucoma/index.html

*これらの方法は、あくまで簡易チェックであり、すべての視野異常を発見できるわけではありません。そしてもしこれらの簡易チェックで異常が出た場合は、早目の眼科受診が必要な状態であるとお考えください。

緑内障の早期発見のためには、定期的な 眼圧、眼底、視野などの眼科検診が大切です。

Q. 眼科での緑内障の検査とはどのようなものですか?

まず、視力などの眼科一般検査のあと、視神経所見や他の病気が無いかを調べるために「眼底検査」を行います。そして、目に空気や器具をあてて眼球の圧力(眼圧)を測定する「眼圧検査」を行います。眼圧が正常な範囲内であるにもかかわらず、視神経に障害がおきているタイプの緑内障(正常眼圧緑内障)の人もいますので、この検査だけでは十分ではありませんが、進行の早いタイプは眼圧が高いので、眼圧検査は大切です。そして、視神経や網膜などの所見と合わせて、視野が正常であるか、狭くなっていないかどうかを調べるために「視野検査」を行います。眼底の視神経や網膜の厚さなどを調べる「眼底三次元画像解析(OCT)」などの検査もあります。これらの、「眼底、眼圧、視野」に関して検査をして、緑内障なのか、その他の病気なのかを検査します。鑑別診断の為に、頭の中に視神経に関する病気が無いかを調べることもあります。

また、治療を開始した後も、これらの検査を繰り返すことによって、進行していないかどうかの判断を繰り返します。

具体的な検査方法は以下のとおりです。

1.眼圧検査
目に空気や器具をあてて眼圧を測定します。正常な眼圧のレベルは10mmHg~20mmHg前後です。

2.眼底検査
検眼鏡や眼底カメラをつかって、視神経乳頭と呼ばれる、視神経が集合している場所を観察したり、眼底の視神経の走行をみたり、その他の病気が無いかをみる検査です。視神経が損傷している場合は、その進行程度が判定できます。

3.視野検査
光の点を点滅させて、視野全体の中の、見える部分と見えない部分を調べます。現在、どのくらい見えない範囲があるのかが判定できます。

Q. 緑内障の治療はどのように行われるのでしょう?

原則はまず、点眼薬を継続します。薬剤1種類で十分に眼圧が下がらない場合は、点眼薬を変更したり、複数の点眼薬を組み合わせたりします。2種類が1本の点眼に入っている配合薬という点眼剤もあります。点眼薬の組み合わせだけでは効果が十分でない場合や、緊急に眼圧を下げなくてはならない場合には、手術が必要な場合があります。

房水の排水路の狭くなった出口を広げたり、別の排水路をつくったりして、房水を流れやすくする手術がありますが、あくまでも眼圧を下げるための手術であり、見えなくなったところを戻す手術はありません。また眼圧の経過によっては、手術を何度も行う場合もあります。メスを使用する外科的手術の代わりに、レーザー光線を使用したレーザー治療もありますが、すべての緑内障がレーザー光で治療できるわけではないのが現状です。

Q. 手術は必要でしょうか?

緑内障の治療は、原則点眼薬で行います。しかし、点眼薬だけの治療では効果が十分でない場合や、緊急に眼圧を下げなくてはならない場合には、手術が必要な場合があります。 また、緑内障の型によっては、点眼を始める前に、手術療法が必要な場合があります。病状によっては、複数回の手術が必要なケースもあります。

昨今は、低侵襲手術と呼ばれる比較的早期の緑内障を対象とした手術もあり、色々な選択肢が増えてきています。手術療法をするか、しないか、どの手術を行うかについては、診察や経過観察の結果の総合判断になりますので、個々の方の状態を専門医が判断することで手術の適応が決まります。

Q. 症状が良くならなくても、治療を続けるべきですか?

緑内障によって一度損傷を受けた視神経は回復しませんので、緑内障が進行して生じている見え方がもとに戻るということはありません。そして、治療しなければ失明につながる恐れがありますから、治療は根気よく続けていく必要があります。

また、点眼を開始した後、その点眼薬による副作用の症状が出た場合は、他の点眼薬を選択することで、気になる症状が改善することはありますので、主治医とよく相談することが必要です。

点眼薬には眼圧を下げるという作用とともに、局所や全身の副作用が出る場合があります。できるかぎり副作用のない薬物を選択すべきですが、眼圧を下げるという目的のためにどこまでの副作用を許容範囲とするかは個人によって違いますので、これも主治医とよく相談することが大切です。

点眼薬を使用することを生活の一部として、定期的に眼圧、眼底、視野検査を受け、医師とともに病気をコントロールし続けていきましょう。

Q. 緑内障と診断されたら、日常生活でどのような点に気を付けるべきですか?

健康的で無理のない規則正しい生活を送るよう心がけてください。特別に「しなければいけないこと」「してはいけないこと」があるわけではありません。ただ、緑内障の型によっては、眼圧が上がりやすい行動や薬物がありますので、自分の眼にとっては、何に気をつければいいのかを主治医に確認してください。
治療には、継続するということが大切です。そして、あまり神経質になり過ぎずに、いつもリラックスした気持ちを持ち続けていることが、病気とうまく付き合っていく鍵となるのです。

Q. 早期発見につなげるためには、どうしたらよいでしょうか?

40歳を過ぎたら、定期的に眼科の検査を受けるのが良いでしょう。
また、近視の強い方や、家族歴のある方、過去の検診などで眼圧が高いなど緑内障を疑われたことがある方は、特に定期的な眼科検診は重要です。
目に痛みがあったり、視野に異常を感じるなど、何らかの症状がある場合は、すぐにでも眼科で診察を受ける必要があります。また、見え方に何らかの違和感がある場合も、「眼鏡が合わないのではないか?」と自己判断して安易に眼鏡屋さんで眼鏡の作り直しで済ますのではなく、眼科で診察を受け、病気の有無を確認することが大切です。そして、緑内障では自覚症状を何も感じないことが多いので、自覚症状がなくても眼科検診の機会を持つことが重要です。

一口に「検診」といっても、「会社や職場の検診」では、通常法律で決まっている「視力検査だけ」しか行わない施設がまだまだ多いようです。眼底検査や眼圧検査、視野検査を実施している施設もありますが、すべてではありません。かなり進行しないと視力が落ちない緑内障は、「視力検査」だけでは発見できません。また、「特定検診」では生活習慣病の発見をターゲットにしていますので、肥満、糖尿病や高血圧がなければ眼科検診は行われませんので、これでは、緑内障は見つかりません。

さらに、「眼科検診」は、一度受ければ一生大丈夫いうものではありません。緑内障は年齢とともに、罹患率が高くなりますし、眼の状態は年々変化していくからです。1回検診を受けて問題がないからといって安心せず、「定期的」に眼科の検診を受けるようにしてください。

“症状があれば必ず「診察」に、症状がない場合は「眼科検診」を”・・・緑内障を早期発見するのにもっとも効果的なのは、「定期的な眼科検診」なのです。

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